2026年4月に共同親権制度が始まったことをニュースや周囲の話で知り、こんなことを考えた方はいないでしょうか。
「自分はもう何年も前に離婚している。共同親権は自分には関係のない話なのだろうか。」
「子どもともっと関わりたい。今からでも共同親権に変更できるのだろうか。」
当事務所にも最近こうしたご相談が増えています。同じ疑問を持っている方は、決して少なくありません。
結論からお伝えすると、すでに離婚している場合でも、共同親権への変更を申し立てることは可能です。ただし、変更は自動的には行われず、一定の手続きを踏んで家庭裁判所に判断を求める必要があります。また、申立てが認められるかどうかは、これまでの養育への関与の実態や子の利益の観点から総合的に判断されます。
本記事では、すでに離婚している方が共同親権への変更を検討する際に知っておくべきことを、法的根拠を示しながら解説します。
1, 「自動的に変更される」は誤解。手続きが必要です
2026年4月の改正法施行により、これから離婚する方は「共同親権か単独親権か」を選択できるようになりました。しかし、すでに離婚している方の親権が、施行によって自動的に共同親権へ変わるということはありません。
改正法施行前に離婚した場合、もともと単独親権として定められた状態が続きます。共同親権への変更を希望する場合は、「親権者変更の申立て」という手続きを家庭裁判所に対して行う必要があります。
この点は、法務省が関係省庁と共同でまとめたQ&A資料(令和8年1月14日改訂版)でも明確に示されています。
「改正法施行前に、それまでに離婚している父母も、父母の双方を親権者とすることを含む親権者の変更の申立てをすることができ、裁判所は、子の利益のため、父母と子との関係や父と母との関係その他一切の事情を考慮して判断することとなる。」
(Q&A民法編 Q3-15)
つまり、改正法施行前に離婚した場合でも、申立ての資格はあるということです。問題はその後、「申立てが認められるかどうか」という点です。
2, 親権者変更の申立て:どこに・どのように申し立てるか
親権者変更の申立ては、家庭裁判所に対して行います。通常は「調停」から始まり、調停で合意が得られない場合は「審判」に移行します。
申立てができる人: 子本人、または子の親族(父・母を含む)
※ 子本人が申立人となる場合、実務上は15歳以上が目安です。民法では15歳を、養子縁組の同意や氏の変更など子の意思が法的に独立して尊重される節目としているためです。15歳未満の場合は、家庭裁判所が特別代理人を選任して手続きを進めることになります。いずれの場合も、事前に弁護士へのご相談をおすすめします。
申立て先: 相手方の住所地を管轄する家庭裁判所(または当事者が合意した家庭裁判所)
手続きの流れ:
- 調停の申立て:まずは家庭裁判所に調停を申し立てる。調停では調停委員が間に入り、双方の話し合いを促す。
- 合意が成立した場合:調停調書にその内容が記載され、変更が確定する。
- 合意が成立しない場合:審判に移行し、裁判所が最終的な判断を下す。
なお、裁判所ウェブサイトには申立書式や手続きの概要が公開されており、申立て前に確認しておくことをおすすめします。
[家庭裁判所のウェブサイトはこちら]
申立書の書き方や添付書類についても、サイト上で案内されています。
3, 裁判所が変更を判断する際に考慮する事情
申立てがあった場合、裁判所は「子の利益」の観点から、個別具体的な事情を総合的に考慮して判断します。一律に「共同親権が認められやすい」「認められにくい」という基準があるわけではなく、あなたとお子さん、そして相手方との関係のすべてが判断材料になります。
具体的に考慮される主な事情には、以下のものがあります。
- 父母と子それぞれの関係の実態(どちらの親と子がどのような関係にあるか)
- 父母間の関係(協力して連絡・協議できる状態にあるか)
- これまでの養育への関与の実績(子の日常生活にどの程度関わってきたか)
- 養育費の支払い状況(後述します)
- 父母相互の人格尊重・協力義務の遵守状況(相手方の養育を尊重してきたか)
- 子の意見・意思(年齢・発達に応じて考慮)
- 協議が調わない理由(感情的な対立なのか、それとも構造的な困難があるのか)
法務省Q&A(Q3-13)は、次のように述べています。
「父母の一方が子の養育に関する責任をこれまで十分に果たしてきたかや、父母相互の人格尊重・協力義務を遵守してきたかも、考慮要素の一つであると考えられる。」
つまり、申立て時点の状況だけでなく、離婚後のこれまでの言動や行動の実績が問われるということです。
4, 変更が認められやすいケース・認められにくいケース
変更が認められる方向に働く事情
法務省Q&A(Q3-11)は、父母の合意がなくても共同親権とすることが子の利益のために望ましいとされるケース例として、以下を挙げています。
- 子と同居する親との関係が必ずしも良好ではないために、子と離れて暮らす親が親権者として養育に関与することによって子の精神的な安定が図られるケース
- 子と同居する親による養育に不安があり、関係機関による支援に加え、別居親の関与があった方が子の利益にかなうケース
- 父母間の感情的な問題と、親子関係を切り分けて考えられる父母のケース
- 支援団体等を活用して養育に協力することを受け入れられるケース
また、当初は高葛藤で合意が難しかった父母でも、調停手続きの過程で感情的な対立が解消され、共同親権の関係を築けるようになったケースもあることが紹介されています(Q3-10)。
変更の申立てにとって不利な事情
一方で、次のような事情は、変更申立てが認められない方向に大きく影響します。
- 養育費を長期間、合理的な理由なく支払ってこなかった事実(Q3-17)
子との関わりをほとんど持たなかった期間が長い
相手方の養育を誹謗・妨害してきた言動の事実
DVや虐待が認定されるような事情(この場合は必ず単独親権に)
相手方が連絡・協議に応じることを拒絶する合理的な理由がある
5, 養育費の不払いは申立てに大きく影響します
これから共同親権への変更を申し立てることを考えている方に、特に強調しておきたい点があります。
養育費の支払い状況は、申立ての結果に直接影響します。
(Q3-17)は、次のように明確に示しています。
「親権者ではない親が本来支払うべき養育費の支払を長期間にわたって合理的な理由もなく怠っていたという事情は、共同親権への親権者変更が認められない方向に大きく働く事情であると考えられる。」
子の養育に関する金銭的な責任を果たしてきたかどうかは、親権者変更の判断において「子の養育にどれだけ責任を持って関わってきたか」を示す重要な証拠となります。
もし過去に支払いが滞っていた時期がある場合は、申立て前に支払いを再開し、誠実な対応の実績を積み上げることが重要です。弁護士への相談も含め、早めに動き出すことをおすすめします。
6, 「元相手が同意しない」場合でも申立ては可能
「相手が絶対に同意しないから無理だ」とあきらめていませんか?
裁判所への申立てには、相手方の同意は不要です。 調停や審判では、相手方が拒絶していても手続きを進めることができます(ただし、調停には相手方の出席が必要なため、相手が全く出てこない場合には審判へ移行することがあります)。
また、法務省Q&Aは次のように述べています。
「父母の協議が調わない理由だけを取り上げて、合意がないことのみをもって父母双方を親権者とすることを一律に許さないのは、かえって子の利益に反する結果となりかねない。」(Q3-10)
つまり、「相手が嫌だと言っている」という事実だけで申立てが却下されるわけではありません。裁判所は、協議が調わない理由も含めた「一切の事情」を見た上で、子の利益の観点から判断するのです。
ただし、相手方が反対する背景にDVや虐待の事情がある場合は別です。その場合は、子の安全を最優先に考えた判断がなされます。
7, 申立てを検討する前に準備すべきこと
共同親権への変更申立てを考えている場合、以下の点を整理しておくことが、手続きをスムーズに進める上で重要です。
確認・整理しておきたいこと:
- 離婚後、子との関わりの実態(面会交流の頻度・内容の記録)
- 養育費の支払い状況(支払い履歴の確認、未払いがある場合はその対応)
- 相手方との連絡状況(協議の試みの有無・内容)
- 子の現在の生活状況・意向(年齢に応じて)
- 変更を求める具体的な理由(子の利益にどう結びつくか)
特に、これまでの行動の実績を客観的に示せる記録(振込記録、面会交流の記録、子どもとのやりとりの記録など)を残しておくことが、申立ての際に大きな意味を持ちます。
8, まとめ:「もう離婚した」は終わりではない
離婚後も、子どもに関わり続けたいあなたへ──
既に離婚しているからといって、子どもとの関わり方を見直す機会が閉ざされているわけではありません。改正法は、すでに離婚している父母にも、親権の在り方を見直す道を開いています。
ただし、申立てが認められるためには、「子の利益のために本当に必要か」という観点から、これまでの養育への関与、養育費の支払い、相手方との協力関係など、様々な事情が総合的に判断されます。
「自分のケースで変更申立ては可能か」「どのような準備が必要か」「相手方が強く反対している場合はどうすればよいか」など、個別の事情によって判断は大きく変わります。
まずは一人で判断せず、専門家への相談から始めることをおすすめします。
当サイト「共同親権弁護士」(レンジャー五領田法律事務所)では、改正前に離婚された方からの親権変更に関するご相談にも対応しています。これまでの状況を丁寧にお聞きした上で、手続きの見通しや準備すべき事柄について、具体的なアドバイスをいたします。
「変更申立ては現実的か」「申立て前に何をすべきか」「相手方の反対があっても動けるか」など、まずはお気軽にご相談ください。
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