「離婚してから、子どもに一度も会えていない。」
そんな状況に置かれている別居親の方に向けて、この記事を書いています。面会を求めても拒否される、連絡しても無視される——そうした「親子断絶」の状態は、2026年4月の改正法施行後、法的に見て新しい局面を迎えています。
当事務所にも、「もう何年も子どもに会えていない」「取り決めはあるのに相手が守らない」というご相談が後を絶ちません。会えない時間は、子どもにとっても親にとっても、取り返しのつかないものになりかねません。ただ待つのではなく、今できることを一つずつ整理していきます。
目次
1, 「親子の断絶」が子どもに与える影響
法的な話に入る前に、まず子どもの側から考えてみます。
国内外の研究が示す重要な事実があります。子どもへの影響は、「離婚そのもの」よりも「父母の葛藤の高さ」によって大きく左右されるということです。
両親が激しく対立し続ける状況や、一方の親と断絶される状況は、離婚という事実そのものよりも、子どもの心身の発達に深刻な影響をもたらすことが複数の研究で示されています。逆に言えば、葛藤を抑えて子どもが両親と関わり続けられる環境を作ることが、子どもの成長にとって最も重要な要素のひとつです。
また、内閣府の世論調査(2021年)では、別居親が離婚後も未成年の子と会うことについて「望ましい場合が多い」または「特定の条件があれば望ましい」と答えた人が合わせて約85%に上っています。社会的な認識としても、子どもと別居親が交流を持つことの重要性は広く共有されています。
会えない状況が長引くほど、子どもとの関係は修復が難しくなります。「今すぐ動く」ことが、子どものためになります。
2, 面会交流の拒否は、法的義務違反になり得る
正当な理由なく子どもとの交流を拒否し続けることは、改正法上の義務違反に当たり得ます。
改正民法は父母に対して、互いの人格を尊重し協力し合う義務を定めています。法務省が公表したQ&A資料(令和8年1月14日改訂版)は、この義務に違反する具体例として、親子交流について取り決めがあるにもかかわらず「特段の理由なくこれを履行しない場合」を明示しています。
さらに、こうした義務違反の事実は、将来の親権者変更の審判において不利な事情として考慮される可能性があります。
「感情的に相手と関わりたくない」という気持ちは理解できます。しかし子どもの立場から見れば、もう一方の親と会えないことは、子ども自身の問題でもあります。
3, まず試みること:記録を残しながら動く
法的手続きに入る前に、今すぐできる準備があります。以下を意識しながら動くことが、後の手続きで大きな意味を持ちます。
残しておくべき記録
- 面会を求めた連絡(メール・LINEのやりとり)
- 電話をかけた履歴・かけたが出なかった記録
- 手紙・プレゼントなど子どもへの働きかけの記録
- 相手が断った際の理由・言葉(できるだけそのまま記録)
誠実な行動を続ける
養育費を支払い続けることは、「子への責任を果たしてきた親」であることを示す重要な証拠になります。どんな状況でも、養育費の支払いは続けてください。感情的になって止めてしまうことは、後の手続きで自分に不利な事情として働きます。
4, 親子交流を実現するための手段:話し合いから法的手続きまで
ADRの活用
話し合いの余地がある場合 等
法的な手続きに入る前に、第三者を介した話し合いの場を作ることが有効な選択肢です。
ADR(裁判外紛争解決手続き)は、裁判所を使わずに、中立的な第三者を交えて話し合いを進める手続きです。家庭裁判所に申し立てる前の段階で利用でき、次のような特徴があります。
- 土日・平日夜間など、柔軟な日程で対応できる機関もある
- 感情的な対立を整理し、子どもを中心に据えた話し合いができる
- 合意に至らなかった場合でも、家庭裁判所の調停に進む道が残される
詳しくは当サイトの「離婚ADRとは」もあわせてご参照ください。
また最高裁判所は、子どもを持つ離婚当事者に向けたビデオ「子どもにとって望ましい話し合いとなるために」を公開しています。相手方への視聴を勧めることが、話し合いの入り口になることがあります。
親子交流調停・審判・履行勧告
相手が話し合いに応じない場合 等
ADRで解決できない場合、または相手が話し合いに全く応じない場合は、家庭裁判所に「親子交流(面会交流)に関する調停」を申し立てることが次の手段です。
調停では、調停委員が双方の話を聞きながら合意を目指します。合意が成立すれば、調停調書という公的な文書に取り決めが記載されます。
調停調書があれば、後に相手が取り決めを守らない場合に、家庭裁判所に履行勧告を求めることができます。それでも状況が改善しない場合は、弁護士と相談の上、さらなる法的手段を検討することになります。
調停で合意できない場合は審判へ移行し、裁判官が親子交流の方法・頻度などについて決定を下します。
弁護士への相談
DVや虐待の主張がある場合 等
相手方が「DVや虐待があった」と主張して交流を拒否しているケースもあります。
そのような主張が事実と異なる場合でも、感情的な反論は事態を悪化させます。家庭裁判所の手続きの中で、落ち着いた態度で適切に対応することが重要です。こうした場面では特に、早めに弁護士に相談することをお勧めします。
一方、相手方の主張に一定の根拠がある場合は、子の安全を最優先とした判断が求められます。この点については、個別の状況に応じて慎重に判断する必要があります。
共同親権下で使える新手続き「親権行使者の指定」
共同親権で膠着状態の場合 等
2026年4月の改正法により、「特定事項の親権行使者の指定」という新しい手続きが設けられました(民法824条の2第3項)。
共同親権の場合に、特定の事項について一方が単独で決定できるよう家庭裁判所に申し立てる手続きです。取り決めができない膠着状態を動かす手段として活用できる場面があります。(裁判所のウェブサイト:親権行使者の指定調停)
5, 会えない状況を動かすために:今後の道筋
-
養育費を誠実に払い続ける
-
連絡を試みた記録を残し続ける
-
子どもへの関心を示す行動を続ける
-
感情的な言動・SNSへの不用意な投稿は控える
-
弁護士に状況を共有し、定期的にアドバイスを受ける
6, まとめ:「待つ」から「動く」へ
「相手が話し合いに応じてくれない」「何をしても無駄だ」という絶望感の中にいる方も多いと思います。しかし、法的な手段は確実に存在し、改正法によってその選択肢は広がっています。
一人で抱え込まず、まず専門家に現状を整理してもらうことが、最初の一歩として最も重要です。
当サイト「共同親権弁護士」(レンジャー五領田法律事務所)では、親子交流の回復・面会交流調停・共同親権への変更など、別居親の方からのご相談にも対応しています。初回相談無料ですので、まずはお気軽にご連絡ください。
あわせて読みたい関連ページ:
[離婚後の選択肢] 離婚ADRとは|調停との違いやメリット・デメリットを解説
裁判所を使わずに話し合いを進める選択肢を詳しく解説しています。
[離婚後の手続き] すでに離婚している場合でも、共同親権に変更できる?
親子断絶の状況から共同親権への変更を検討している方へ。
[判断の目安] 共同親権は自分たちに向いている?4つの類型で考える判断の基準
自分のケースに共同親権が適しているかを判断するためのフレームワークを解説しています。
[専門家へのご相談] 弁護士紹介:共同親権に精通したプロフェッショナル
面会交流から共同養育計画まで、個別の状況に応じてご対応します。