共同親権とは|子どもを「置き去り」にしないために、離婚前に知っておきたいこと【親子のための共同親権】 | 共同親権 弁護士

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共同親権とは|子どもを「置き去り」にしないために、離婚前に知っておきたいこと【親子のための共同親権】

離婚を考えるとき、頭の大半を占めるのは、多くの場合「相手とのこと」です。財産をどう分けるか、いつ別れるか、もう顔を合わせたくない——。夫婦の関係を清算することにエネルギーが注がれ、そのあいだ、いちばん守られるべき子どものことが、後回しになってしまう。これは、離婚を経験する多くの家庭に共通して起こりがちなことです。

2026年4月に始まった共同親権の制度、そしてその土台となる「共同養育計画」という考え方は、まさに「離婚のときに、子どもを置き去りにしない」ための仕組みです。

この記事では、共同親権とは何かという基本から、どう選び、何を決めておけばよいのかまでを、法的根拠に基づいて整理します。制度が定着した後も変わらず役立つ「子どものために知っておきたいこと」を、順を追ってお伝えします。

目次

1, 日本の離婚の約9割は「協議離婚」──だから子どもが置き去りになりやすい

まず、日本の離婚の大きな特徴を知ってください。日本の離婚の約9割は、裁判所などの公的機関が関与しない「協議離婚」です(※1)。当事者だけの話し合いと、一枚の離婚届で成立します。

手続きが簡単であることは、一面ではよいことです。しかし裏を返せば、子どものための取り決めを誰もチェックしないまま、離婚が成立してしまうということでもあります。実際、法務省が2021年(令和3年)に公表した協議離婚の実態調査では、次のような事実が示されています(※2)。

  • 子どもに離婚のことを説明していない親が約47%
  • 子どもに、父母のどちらと同居するかを聞いていなかった親が約65%
  • 養育費について取り決めをしていないケースが相当数にのぼること。

夫婦関係の清算に気を取られるあまり、「子どもがこの先どう暮らし、どちらの親とどう関わっていくのか」という最も大切な話し合いが、抜け落ちてしまう。これが、日本の離婚が抱える構造的な課題です。

2023年(令和5年)の離婚件数は18万3814件にのぼり、そのうち約51%(過半数)の夫婦に未成年の子どもがいました(※3)。これだけ多くの子どもたちが、親の離婚を経験しているのです。

そして、ここが重要なのですが、研究では、子どもへの影響は「離婚そのもの」よりも、「離婚をめぐる父母の争いの激しさ」によって大きく左右されることが示されています(※4)。つまり、子どもを守るために本当に必要なのは、「離婚しないこと」ではなく、争いをできるだけ減らし、子どもを中心に据えた取り決めを、きちんと残しておくことなのです。

共同親権と共同養育計画は、まさにそのためにあります。

2, 共同親権とは──「子どもの重要なことを、父母二人で決める」

共同親権とは、離婚後も父母の双方が親権者となり、子どもに関する重要な事項を二人で決めていく形をいいます。2026年4月1日に施行された改正民法によって、日本でも選べるようになりました。

これまでの日本では、離婚後の親権は必ず父母のどちらか一方に定める「単独親権」しか認められていませんでした。改正によって、家庭の事情に応じて「共同親権」か「単独親権」かを選択できるようになった——これが今回の改正の最も大きな変化です。

法務省パンフレットも、共同親権を「こどもについて重要な事項を父母二人で決める」形、単独親権を「こどもについて重要な事項を父母の一方が決める」形と、平易に説明しています。

大切なのは、共同親権それ自体が「正解」なのではないということです。改正法が繰り返し掲げるのは「子の利益」であり、共同にするか単独にするかは、あくまでその子どもにとって何が最善かという観点から選ばれるべきものです。

単独親権と共同親権のちがい

※ どちらが良い・悪いではなく、その子どもにとって何が最善かで選びます。

観点 単独親権 共同親権
親権者 父母の一方 父母の双方
重要な事項の決定(進学・重大な医療・氏の変更など) 親権者が決める 父母の双方で決める
日常の行為(食事・給食・習い事・短期旅行など) 親権者が決める 一緒に暮らす親が単独で決められる
急迫の事情(DV避難・緊急医療・入学期限など) 単独で対応できる 単独で対応できる
監護(誰が主に育てるか) 監護者・監護の分掌を定められる 監護者・監護の分掌を定められる
養育費・親子交流 取り決めが必要 取り決めが必要

3, どうやって選ぶのか──協議か、家庭裁判所か

協議離婚の場合は、まず父母の話し合い(協議)で決め、合意した内容を離婚届に記載します。離婚届の親権者欄も、父母双方を親権者とする場合に対応できるよう様式が改められています。

話し合いで決まらない場合は、家庭裁判所の調停・審判で判断されます。裁判所は「父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情」を考慮して決めます。

ただし、次の場合には、裁判所は必ず単独親権としなければならないとされています(新民法819条7項)。

  • 一方の親が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき
  • 父母が共同して親権を行うことが困難と認められるとき(DVや虐待などにより、対等な協議が期待できない場合を含みます)

つまり、DVや虐待がある場合には、共同親権は選ばれません。 共同親権は「二人が子どものために協力し合える」ことを前提とした制度であり、その前提を欠く場合には、子どもの安全と安定が最優先されます。

4, 「毎日いちいち二人で決める」わけではありません

共同親権と聞くと、「子育てのすべてを、別れた相手といちいち相談するのか」と身構える方がいます。しかし、そうではありません。改正民法は、一方が単独で決められることと、双方で決めるべき重要な事項を、きちんと区別しています。

① 単独で決められる「日常の行為」(新民法824条の2)
日々の食事・服装・髪型、学校給食や健康診断の手続き、通常の予防接種や風邪の治療、習い事、短期間の国内旅行など、日常的な監護・教育に関する行為は、一緒に暮らす親が単独で決められます。

② 双方で決める「重要な事項」
入学・転校・退学などの進路、生命に関わる医療行為、子の氏(名字)の変更や養子縁組、長期の留学、転居など、子どもの将来に大きく関わる事項は、父母双方で決めるのが原則です。

③ 急迫の事情があるときの単独対応
そして、「子の利益のため急迫の事情があるとき」は、一方の親だけで対応できます。 DVや虐待からの避難(転居を含む)、緊急の医療、入学手続の期限が迫っている場合などです。「相手の同意がないから動けない」ことで子どもの安全や利益が損なわれないよう、明確に定められています。

一緒に暮らす親が単独でOK 日常の行為
  • 食事・服装・髪型
  • 給食・健康診断の手続
  • 通常の予防接種・風邪の治療
  • 習い事
  • 短期間の国内旅行
父母の双方で決める 重要な事項
  • 進学・転校・退学
  • 生命に関わる医療
  • 氏の変更・養子縁組
  • 長期の留学
  • 転居
一人でも対応できる 急迫の事情
  • DV・虐待からの避難
    (転居を含む)
  • 緊急の医療
  • 入学手続の期限が
    迫っている場合

※ 新民法824条の2ほか、法務省Q&A(民法編)の具体例をもとに作成。

共同親権でも「毎日いちいち二人で」ではありません

改正民法は「一人で決められること」と
「二人で決めること」を区別しています

一緒に暮らす親が単独でOK 日常の行為
  • 食事・服装・髪型
  • 給食・健康診断の手続
  • 通常の予防接種・風邪の治療
  • 習い事
  • 短期間の国内旅行
父母の双方で決める 重要な事項
  • 進学・転校・退学
  • 生命に関わる医療
  • 氏の変更・養子縁組
  • 長期の留学
  • 転居
一人でも対応できる 急迫の事情
  • DV・虐待からの避難
    (転居を含む)
  • 緊急の医療
  • 入学手続の期限が
    迫っている場合

※ 新民法824条の2ほか、法務省Q&A(民法編)の具体例をもとに作成。

5, 「監護」と「監護の分掌」──誰が主に子どもを育てるか

親権とあわせて理解しておきたいのが「監護」です。監護とは、子どもと一緒に暮らし、日々の世話や教育を行うことをいいます。親権を共同にしても子どもが同時に二つの家に住めるわけではありませんから、「主にどちらの家で暮らし、誰が日々の世話をするか」を別に決めておくことが大切です。

改正民法は、この取り決めの幅を広げるため、「監護の分掌」という考え方を加えました(新民法766条1項)。これは、子どもの監護を父母で分担すること——たとえば監護を担当する期間を分けたり、教育に関する事項の一部を一方に委ねたりすることを指し、単なる面会(親子交流)にとどまらず、具体的な監護の中身を話し合って定める点に特徴があります。この「監護の分掌」は、共同親権でも単独親権でも定めることができます。

6, 「原則の形はない」──子どものために決める共同養育計画

ここが、この記事の核心です。共同親権を選ぶにせよ単独親権を選ぶにせよ、子どもを置き去りにしないために欠かせないのが、「子どものことを、あらかじめ具体的に取り決めておく」こと。この取り決めを、法務省は「共同養育計画」と呼んでいます。

大切な考え方は、「原則的な形は存在しない」ということです。法務省のパンフレットも、「原則の形はありません。こどもにとって一番よい形を選んでください」と明記しています。そのうえで、父母がまず考える「親権」と「子どもの生活場所」を軸に、代表的な3つの型が記載例として示されています。

共同養育計画の3つの型

「原則の形はありません。こどもにとって一番よい形を選んでください」(法務省パンフレットより)

1
親権 共同親権

こどもについて重要な事項を
父母二人で決める

子どもの生活場所 父母どちらかの住所地

いずれか一方の家で暮らす

2
親権 共同親権

こどもについて重要な事項を
父母二人で決める

子どもの生活場所 父母双方の住所地

期間で監護を分担して暮らす

3
親権 単独親権

こどもについて重要な事項を
父母の一方が決める

子どもの生活場所 父母どちらかの住所地

親権者の家で暮らす

いずれの型でも、共同養育計画には、子どもの名前と親権者、生活場所、親子交流、養育費、そして「重要な事項の決め方」や「もめたときの再協議の方法」などを盛り込みます。こうして「誰が・いつ・どのように子どもを育てるか」を紙に落としておくことが、後々の衝突を防ぎ、子どもを板挟みにしない最大の備えになります。

7. 取り決めを支える仕組み──国の手引きと、地域の支援を活用する

「子どものために取り決めをと言われても、当事者だけでは難しい」——そう感じるのは当然です。だからこそ、その取り決めを支える仕組みが、少しずつ整えられてきています。使えるものは、遠慮なく使ってください。

まず使える「国の手引き」(無料ダウンロード)

国(法務省)は、離婚を考える人の多くが訪れる市区町村の窓口で、離婚届の用紙とあわせて共同養育計画の手引きを配布する取り組みを始めました。次の資料は、どなたでも無料でダウンロードして使えます。

埼玉県・さいたま市にお住まいの方へ

当事務所(レンジャー五領田法律事務所)は埼玉県さいたま市にあり、埼玉県内にお住まいの方からのご相談を多くいただいています。埼玉県内には、離婚前後の親子を支える公的な支援が用意されています。

さいたま市では、「養育費確保支援事業」として、公正証書の作成費用の補助(公正証書作成促進補助金)、養育費保証の契約費用の補助、養育費が不払いになった際の強制執行の費用補助などを設けているほか、離婚前後の法律問題に関する無料相談も実施しています(さいたま市|養育費と親子交流の取り決めをしましょう ひとり親家庭向けの支援制度 )。

埼玉県でも、母子・父子自立支援員による養育費の相談女性弁護士による無料法律相談、別居親と子の交流を専門機関がサポートする親子交流支援事業が行われています(埼玉県|養育費の確保支援について 埼玉県|ひとり親家庭 )。

お住まいの市区町村によって内容は異なりますので、まずは市役所・区役所のひとり親支援やこども家庭の窓口に、どんな支援があるかを確認してみることをおすすめします。国レベルでも、こども家庭庁の「養育費・親子交流相談支援センター」など、電話やオンラインで相談できる窓口があります。

支援が乏しい地域でも、あきらめないでください

ただし、正直にお伝えすると、こうした支援には地域差が大きく、まだ全国どこでも同じように受けられるわけではありません。 お住まいの地域に手厚い制度がなくても、どうかがっかりしないでください。制度が整っていない地域でも、弁護士やADR機関が、子どものための共同養育計画づくりを直接お手伝いできます。 大切なのは、「支援がある地域かどうか」ではなく、「一緒に考えてくれる相手を見つけられるかどうか」です。

8, 世界から見た日本の位置

共同親権は、日本より先に多くの国で一般化しています。法務省の調査でも、アメリカ(カリフォルニア州)、ドイツ、フランス、オーストラリア、韓国、台湾の6か国が対象とされました。

これらの国の多くでは、離婚に際して公的機関や専門家が関与し、子どもの養育に関する取り決めを支える仕組みが整えられています。それと比べたとき浮かび上がる日本の特徴が、前述の「当事者だけで完結する協議離婚が主流」という点でした。裏を返せば、日本が進むべき方向は、先行国の経験からある程度見通せます。取り決めを当事者任せにせず、社会が支える——その方向へ、日本も歩みはじめています。

9, 共同親権になっても「変わらないこと」

多くの方が不安に思う点にもお答えします。共同親権を選んでも、変わらないことがたくさんあります。

  • 児童扶養手当:親権の有無ではなく「子を監護している実態」で判断されるため、取り扱いは変わりません。
  • 保育所・認定こども園:監護の実態を踏まえて判断する現行の取り扱いに影響しません。
  • ひとり親家庭への支援:「現に児童を扶養している」ことが基準であり、変わりません。

「共同親権にすると手当がもらえなくなるのでは」といった心配は、多くの場合、必要ありません。

10, まとめ:子どもを真ん中に置くために

共同親権をめぐって本当に大切なのは、「共同か単独か」という選択そのものよりも、離婚のときに子どもを置き去りにせず、その子のための取り決めをきちんと残せるかどうかです。

そのために必要なのは、制度を正しく「知る」ことと、必要な支援に「つながる」ことの両方です。制度を知らなければ選べませんし、一人で抱え込めば、子どものための取り決めは後回しになりがちです。

当サイト「共同親権弁護士」(レンジャー五領田法律事務所)は、この二つを支えるためにあります。共同親権を選ぶべきか、どんな共同養育計画を作ればよいか、相手と合意できないときはどうするか——お子さまの利益を最優先に、制度の入口から具体的な計画づくりまで、一緒に考えます。

「うちの場合は、子どものために何をどう決めればよいのか」。それを知りたくなったときが、専門家に相談する最初のタイミングです。まずはお気軽にご相談ください。


【データの出典】

※1 協議離婚が離婚全体の約9割を占めること:厚生労働省「人口動態統計」、および法務省民事局「共同養育計画の作成促進に関する調査研究について」(家庭の法と裁判62号・2026年)。

※2 子どもへの説明・同居親の確認・養育費の取り決めに関する割合:法務省「協議離婚に関する実態についての調査研究業務報告書」(2021年/令和3年公表)。同調査は棚村政行「協議離婚における当事者支援の重要性」(家庭の法と裁判61号・2026年)でも紹介されています。

※3 2023年(令和5年)の離婚件数18万3814件・未成年の子がいる割合約51%:厚生労働省「人口動態統計」(令和5年)。

※4 子どもへの影響は離婚そのものより父母の葛藤の高さに左右されること:福丸由佳「離婚時における親と子どもへの心理支援」(家庭の法と裁判61号・2026年)ほか。

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